昨日「本当に受けていないのなら、そのデータを撤回しましょう」と書いた、脱退手当金を受けたか受けてないか(?)という話ですが。そもそも、脱退手当金って何?
旧法の厚生年金保険法*では、60歳に到達したときまたは60歳に到達したあと、被保険者資格を喪失した方が老齢厚生年金の受給要件を満たさない場合は、脱退手当金を請求できることになっていました。
(日本年金機構オフィシャルサイトより)
って、これじゃ分からない・・・ ですよね。
たとえば今から60年前、渡米するのでそれまで勤めていた会社を退職することになった女性がいたとします。
今から56年前の1961年4月1日までは、海外に住んでいる期間は何もしなくても年金の受給資格に合算できるという制度が無かったことを思い出して下さい。アメリカに住んでいるだけで、その期間を年金の受給資格に合算できるようになったのは、昭和36年4月2日からです。
これより前(昭和36年4月1日以前)に会社を辞めて渡米した方は、将来日本の年金を受けられる可能性はありませんでした。
こういう方のために、お勤め先の給料から天引きされていた厚生年金保険料を本人に払い戻す制度がありました。この払い戻し金のことを脱退手当金とよんでいます。
この脱退手当金を受けた方というのは悲しいかな、昭和20年代後半~30年代前半にお勤めだった女性に多いのです。
これはなにも女性差別ではなく、当時の社会的通念上、女性が定年まで職を全うして退職後は自分の資格期間で年金を受け取ることを期待されていなかったからにほかなりません。
ようやくここで本題に入ります。アメリカ在住の日本人女性の中に、脱退手当金を受けていないのに「受けたことにされていた」という例がありました。
本当に受けていないのであれば、日本年金機構のデータを覆すこと可能ですのでご連絡下さい。
ですが、本人が受けていないと主張していても、「実際には受けていた」ケースもありました。
まあ、昔のことですが思い当たりませんか? 渡米する直前に会社を辞めた場合、退職する当日は何かと慌ただしいものです。
人事部の職員あるいは経理・庶務の担当者が退職時の精算について説明してくれますね。どれがお給料の精算分なのか、退職金なのか、あるいは結婚する方はお祝い金か。その内訳がはっきり分からないまま「まあ、もらえるものは受け取っておこう」と封筒で手渡されたかもしれません。
当時は、おそらく現金で。その中に脱退手当金が含まれていた可能性は大いにあります。
あるいは親族が代理で受け取っていることも考えられます。脱退手当金は退職時に本人に渡すのが原則ですが、姓が同じ印鑑で受領印が記録として残っていますと、受けたことにされているデータを覆すことはできません。
上とは別に、本当に支払われていないのに雇用主側が「脱退手当金支払い済み」に処理している場合もありました。この場合はいわずもがな、データは訂正できます。この方は現在無事に年金を受け取られています。
さて、新法になってからも脱退手当金が支払われることがありますので、最後にその要件を引用しておきます。
脱退手当金の受給要件
脱退手当金の受給要件は、昭和61年4月からは昭和16年4月1日以前生れの方に限り次の全ての要件を満たしたときに受給できます。
- 被保険者期間が5年以上で老齢年金を受けるのに必要な被保険者期間を満たしていない。
- 被保険者資格を喪失していること。
- 60歳以上であること
- 通算老齢年金、障害年金を受ける資格がないこと。
- 既に脱退手当金の額以上の障害年金、障害手当金を受けていないこと。
(日本年金機構オフィシャルサイトより)
* 厚生年金保険法の大きな改正は昭和61年(1986年)。これより前の厚生年金保険法を旧法と呼んでいる。