もちろんこれ、年金の受給権の話です。 アメリカで専業主婦という立場に「ある条件」が重なると、日本の年金が受給できなくなるという事態が。 これって、日本国内で働いた経験があって厚生年金保険に加入している人でも、あるいは日本の第3号被保険者の資格期間がある人にも起こりうることなので、よっく注意して下さい。
そのある条件とは、アメリカ市民権を取るタイミングです。
米国在住でも比較的若い世代の方々は、アメリカの市民権を取得しないで日本国籍を保有している方が多いと思います。
これは当然と思います。 アメリカ市民権を取得するメリットって無いですからね。 選挙に参加できるようになりますが、政治に関心の無い方にはメリットなし。
1つだけ市民権を得てメリットがあるとすれば、連邦政府の仕事につくことはできます。 日本の国家公務員と似たような立場ですが、国のお仕事に就くことができます。 ※FBIとかCIAの職に応募したければ、アメリカ市民であることは必須です。
さて、比較的ご年配の方で現在80歳以上の方々に実際あったことなのですが、80 年代~90 年代のレーガンとブッシュ(父親の方)政権(どちらも共和党)の時期に、「外国籍のままだと遺産の相続ができない。夫や妻がなくなった場合、その財産は国にとられてしまう」といった、とんでもないデマが広まったことがありました。
実際にはそんなことはなく、ある一定額(〇〇ミリオン)を超える財産に対してかかる相続税のパーセンテージが、外国籍とアメリカ市民では違ってくるという税法上の変更が一時あっただけなのですが、現在はこの差別的税法はありません。
アホな日本人は「財産をとられてしまう(!)」というデマの方を信じて、あわてて市民権をとってしまったことがあります。 それが少数でなく本当に多くの人が、この噂に翻弄されて市民権を取得しました。
また、それよりずっと昔60年代70年代には、アメリカの軍人と結婚して渡米してすぐに米市民権を取得したという方が多いと思います。
市民権をとるタイミングはご本人の事情ですからどうってことはないのですが、市民権をとった後にご自身がアメリカ国内で働いてきっちりSSA(ソーシャルセキュリティ税)を納めていたかどうか(?)は大きな問題となります。
例えばこんな経歴の方なんですが:
日本で5年働いた後に渡米。 その3年後にはアメリカ市民権を取得されました。 日本国籍を保有するままアメリカに在留していた期間(合算対象期間=カラ期間)はわずか3年ですね。
アメリカで専業主婦(主夫も含む)の場合、自身はソーシャル・セキュリティ税(SSA)を支払っていません。 ご自身のSSAのクレジットが無い人となります。
日本での厚生年金第2号被保険者の資格が5年(60カ月)、日本国籍を保有したままアメリカに住んでいた期間が3年(36カ月)ですね。 この第2号の期間と合算対象期間(カラ期間)を足して、年金の受給資格期間は96カ月になります。
アメリカ在住でも市民権を取得した後は専業主婦であった期間はSSA税を支払っていませんから(夫だけが納付している)、ご自身はクレジットが0となります。
日本の老齢厚生・基礎年金を受けるには、受給資格の120カ月(10年)を満たさなければなりませんので、年金は支給されません。 この方が日本で働いた期間に収めていた5年分の厚生年金保険料は掛け捨てになるという、なんとモッタイ無いことに。
つぎ~! 長い専業主婦の期間の中でも少しの期間だけフルタイム・パートタイムで働いてW-2(被用者)ベースの収入があった方はどうでしょうか? 上の例よりも、実はこのケースにあたる方のほうが多いと思います。
日本でのクレジット=36カ月
日本国籍を保有したままアメリカ在住期間=36ヶ月
アメリカの社会保障制度加入期間=42カ月
36 + 36 + 42 = 114ヶ月
わずか 6カ月足りないため、日本の老齢年金を受けることができません。 短縮措置後の資格期間10年すら満たしていませんから。
では、日本で早くに結婚していてその後はずっと専業主婦という方は?
これはもう、わかりますね? アメリカにはそもそも第3号被保険者という考え方ありません。
働かざる者、年金もらうべからず。
※ FBIは “Federal” と名が付くとおり連邦政府の期間ですが、実は州ごとに分かれてそれぞれ別に機能している政府機関です。もとは外国人であっても、38歳までにアメリカ市民権を取得した者は採用対象になります。 しかしこの、 “US Citizen” であることを条件にしない職種がごく一部あります。 たとえば、外国語を理解する者で Linguist の仕事においては市民権をもっていない者を一定期間のみ採用しています。