日本にいた頃、人材派遣の会社に登録して働いていたことがある・・・
という方。
昭和50年代から平成に入るころ、人材派遣会社の数は急激に増えました。 いわゆるハシリだったテンプスタッフやマンパワーに加え、人材派遣・ブラック企業※という見出しが新聞の見出しにあったのもこの頃からでした。
>※スタッフサービスの正社員で過重労働により自殺までされた方が出たのは、昭和の最後の頃でした。 その後も元従業員のサービス残業関連訴訟が2件ありました。
大手の商社やコンピュータの総合会社でも、子会社として人材派遣会社を設立し始めたのがこの頃です。
そういう時代背景を踏まえ、現在アラ還のお年頃になる方から「昔、派遣の仕事ならいくつかしてたんだけど・・・」と相談されることがあります。
これら数多ある人材派遣会社が当時、厚生労働省が企業向けに推奨していた派遣社員の社会保険加入制度を遵守していたならば、
3か月を超えて派遣の仕事に従事している者
については、日本の社会保険制度(厚生年金)に加入する権利が与えられていたはずです。
が、実際に厚生年金に加入していた方はそう多くはありません。 過去16年で私が年金の記録掘り起こし作業をしてきた中で、派遣社員として働いていた方の厚生年金加入記録が見つかった例は1件もありませんでした。
当時、派遣会社から「厚生年金に加入できますよ」と、情報を提示されていた方は少ないのではないでしょうか?
このような経緯もあり、厚生労働省や旧)社会保険庁・日本年金機構では、パートやアルバイトで働く方々(週40時間未満勤務する者)についても厚生年金に加入できるようにプランが検討されてきました。
過去に社会保険制度なんて無縁だったという方も、ようやく、2016年あたりから社会保険の加入対象が広がってきています。 ご存知でしたか?
平成28年(2016年)10月1日より、パートタイムやアルバイトとして働いている人の厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入要件が、それまで「週30時間以上労働する者」からさらに、広がりました。
平成29年4月からは、従業員500人以下の会社で働く方も労使で合意すれば、会社単位で社会保険に加入できるようになっています。
社会保険に加入すると将来の年金は増えます。 また年金を受ける年齢になる前でも、現役中の医療保険の給付が充実します。 働いている間もより安心な手厚い保障を受けることができるのです。
これは知らないと損します。
1.社会保険制度のどこが変わったの?
加入対象が「週20時間以上働く者」に広がりました。
日本に住む20歳以上の方や、一定の条件を満たす条件で働く方は、公的年金制度(国民年金や厚生年金保険)と医療保険制度(健康保険など)に加入することになっています。
このうち、会社などに雇用されて働く職員など「被用者」を対象とする厚生年金保険や健康保険を「社会保険」といいます。 社会保険の適用範囲は平成28年10月1日より拡大されています。
それまで一般的に週30時間以上働く方が厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入の対象でしたが、平成28年10月からは、従業員が501人以上の会社について、週20時間以上働く方などにも対象が広がりました。
さらに、平成29年4月からは従業員が500人以下の会社であっても労使で合意していれば、会社単位で社会保険に加入できるようになりました(※1)。
※1.従業員500人以下の会社が、労使の合意により社会保険の加入を行う場合、従業員の2分の1以上の方の同意を得た上で、事業主から、年金事務所へ申出を行う必要があります。
これにより、パートやアルバイトなど短時間で働く方の社会保険の適用範囲がさらに広がり、そうした方も社会保険のメリットを受けられるようになります。
適用対象となる方の範囲はこのように変わりました
社会保険に新たに加入することになる対象者
~次に当てはまる方は、社会保険の新たな加入対象者である可能性があります
出典:厚生労働省 – 平成28年10月1日
2.社会保険に加入するメリットは?
将来もらえる年金が増えるほか、保険料の半分を会社が負担します
厚生年金保険・健康保険(社会保険)に加入するメリットには、大きく次の4つがあります。
(1)将来もらえる年金が増えます
厚生年金保険に加入すると、全国民共通の基礎年金に加えて、在職中の給料の額に基づいて計算される「報酬比例」の厚生年金を受け取ることができます。例えば、厚生年金保険に40年間加入し、毎月8千円の保険料を納めた場合、将来受け取る年金額は毎月1万9千円増えます(※2)。
※2.40年間の報酬が8万8千円であるなどの仮定を置いたモデルケースの場合。
(2)障害がある状態になった場合なども、より多くの年金が支給されます
厚生年金保険の加入期間中に、万一障害がある状態になった場合、障害基礎年金のほかに障害厚生年金が支給されます。 障害厚生年金には、月額約4万9千円の最低保障額が設けられています。 また、障害基礎年金は障害等級1級または2級の場合に支給されますが、障害厚生年金は障害等級3級の場合も支給されます。
万一お亡くなりになった場合も、遺族に遺族基礎年金のほかに遺族厚生年金が支給されます。 遺族基礎年金は18歳未満の子がいない場合は配偶者に支給されませんが、遺族厚生年金は18歳未満の子がいない場合も配偶者に支給されます。
(3)医療保険(健康保険)の給付も充実します
医療給付の内容は、各医療保険制度共通で、基本的に本人・家族で差はありませんが、一部の現金給付(傷病手当金、出産手当金)について、差があります。
健康保険に加入していると、病気やけが、出産などで仕事を休まなければならない場合には、傷病手当金や出産手当金として、賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます。
(4)会社が保険料の半分を負担します
国民年金や国民健康保険では被保険者本人が保険料を全額負担しますが、厚生年金保険や健康保険に加入した場合には、保険料の半分を会社が負担します。 つまり、厚生年金保険では、自身が支払った保険料の2倍の額が支払われていることになり、それが給付につながります。
3.どんな手続きが必要?
厚生年金保険・健康保険の加入手続きは勤め先を通じて行います。
適用の拡大により新たに厚生年金保険や健康保険に加入する方は、基本的に、ご自身の勤め先の会社を通じて手続きを行うことになります。 ただ、それまで加入していた国民健康保険や配偶者の健康保険の資格喪失などの手続は、別途ご自身で行う必要がありますのでご注意ください。
【国民年金に加入している方】
厚生年金保険の加入手続きは勤め先の会社を通じて行います。
【配偶者の健康保険に加入している方】
健康保険の加入手続きは、ご自身の勤め先の会社を通して行いますが、配偶者の健康保険の資格喪失の届出を配偶者の勤め先を通じて行う必要があります。 その旨を配偶者の勤め先に申し出てください。
【国民健康保険に加入している方】
健康保険の加入手続きは勤め先の会社を通じて行いますが、国民健康保険の資格喪失の届け出は自身で行う必要があります。 具体的な手続きなど詳しくは、お住まいの市区町村にお問い合わせください。