厚生労働省は毎年5月の末日で国民年金の保険料納付状況をしめて、その結果を6月に公表することになっています。
出典:厚生労働省・公的年金被保険者数の動向(令和2年)
出典:厚生労働省・国民年金保険料納付率の推移(令和2年)
ここ数年、国民年金保険料の納付率は70%台になっています。 5年前には60%台だったものが、10%近く上がっています。
若い層で「自分たちが相当の年齢に達したときは、もう年金なんて支給されない」とまだまだ不信感を持っている方もいると思いですが、そういう層を含めても保険料納付率75%(令和2年推定)はまずまずの水準だと思います。 保険料の納付の状況を見直したり納付方法にいろんな選択肢を提案したり、あるいは納付免除について国民に知らせたりなど、厚生労働省および日本年金機構の努力が少しは報われた結果と思われます。
喜んでばかりいられないのは、納付率が伸びていることが全体の納付額総計が増加していることにはならない点です。
納付率を計算する時、その計算式の分母(保険料を納付すべき人の数)からは、法定免除、申請免除、学生納付特例に該当する人の数は差し引かれます。分母の数は小さくなるのです。
さらに、保険料の全額免除や4分の3・半額・4分の1免除の者の人数も「納付している」人にカウントされます。イコール分子は大きくなります。
今の日本、国民年金の納付率は少し上がっていても、保険料全体の納付の額は上がっていないのです。
まとめに行く前にちょっと横道にそれますね。直近の5年だけでなく過去32年間の全体の納付状況推移をみて下さい。
多くの人は、2006年の消えた年金記録問題あたりから国民の年金制度に対する不信感が高まって保険料を納付する人が下がったと考えがちです。さらにリーマン・ショック(2008年)でさらに下がったと思っている人も多いことでしょう。
実はこれ、違うんですね。バブルが崩壊した1990年でも、直後には納付率は急に下がってはいません。国民年金保険料の納付率が本格的にが下降し始めたのは、大手製造業の工場の「派遣切り」が始まった1996年(平成8年)あたりなのです。
つまり、派遣を更新されず雇用を切られて収入が途絶え、「払いたくても払えない」状況に追い込まれた人たちの未納が始まったのがこのあたりで、この状況は現在も引きずっています。
ここまで非常にネガティブなことばかり書いてきましたが、タイトルに戻ります。「保険料の納付率は本当に低いのか?」
前半に私は「国民年金」保険料の納付状況ばかり書きました。しかし、「厚生年金」を含む公的年金全体の保険料納付状況はどうでしょうか?
公的年金の加入者状況を見てみると、下の表のように種別で振り分けられます。(平成28年度)
種別 人数(万人) 国民年金第1号被保険者等 1,575
(内、保険料納付者:813 免除者:356 学特・猶予者:227
未納者:179)国民年金第2号被保険者等 4,264国民年金第3号被保険者 889未加入者 19合計 6,728
厚生労働省 公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について(概要)
正規社員は社員ひとり一人の意思にかかわらず、厚生年金保険料を源泉徴収という形で納付せざるを得ません。
全体の年金制度の保険料未納者は、実は全体の3%(6,728万人に対して19万人)にしかならないのです。
さて明日は、年代別保険料の納付状況について書いてみます。