余命2ヶ月を宣告されたはずのお客様とスーパーでバッタリ会ってしまったのは、半年もすぎた頃でした。ずいぶんお元気そう、、、
よほどバツが悪かったのか、バレたついでに言ってやれ(!)と思ったのか、そのあとお電話が・・・
「23年分の年金が戻ってくるなんて、あなたが言ったことは嘘だ。 過去の分は5年しか出ませんでしたよっ!」
ん? なんだ? 言われっぱなしのまま電話はプツリ。いったいこの日本人女性は何をしたのか?
夕方になり、なんだか重苦しいものを胸にかかえたまま、とにかく九州のF県にある日本年金機構業務センターへ電話を入れてみることにしました。
「ちょっと調べて欲しいことがあるんだけど」
折り返しの機構の回答は、「え~、関東中央の業務センター* と連絡をとりましたところ、大変言いにくいことに、この方は関東のK県内にある年金事務所で既に年金を受ける手続きをしており、さらに1回目の年金はもう受け取っています」
*センターの名称は一般からの電話がはいらないよう仮名にしてあります。
ああ、やられた、、、
ここで「どうして?」と思った読者の方がたぶんいらっしゃいはず・・・ 「はて? この人には年金の記録が無いのにどうやってその5年分の年金を受け取ったの?」
そこなんですよ。
そもそも半年前に私のところへ相談にお越しいただいた時には、この女性の年金記録は確かに、まったく何も! 無かったのです。1ヶ月も・・・無かった。それは日本年金機構本部のデータベース管理部門にも再度確認していました。
そこから私は日本の調査員を九州へ派遣させ、この調査員が足で稼いでやっと復旧させた年金記録を、日本年金機構のこの担当者がデータベースに入力したんだもの。
ところがちょうどその頃に、この「癌で余命2カ月を宣告された」と言っていた女性は、関東のK県で別の方に年金の請求手続き依頼しました。
私との契約書を無効にしないまま、です。しかしそんなことはこの際大したことではありません。問題は、彼女自身が本来受けられるはずだった18年分の年金に時効を成立させ、直近の5年分の年金しか受け取っていないことにあります。
彼女の職歴がぜんぶ九州のものだったからこそ、私はF県で記録の復旧にあたりました。ようやく従業員記録を探し当て、F県の年金事務所はこの年8月初めに彼女の年金記録をデータベースに入力しました。
その直後の8月中旬に、関東のK県で年金請求がなされたわけです。
K県の裁定審査官**が端末のスクリーンで確認した時には、中央のデータベースにはまるで昔から有ったかのように彼女の年金記録が載っかっちゃってました。 ですから、日本年金機構では記録の保管に落ち度が無かったと判断され、時効5年が成立したのです。
年金の請求手続きが83歳になるまで遅れたのは、請求者本人の責任とされました。 本人が「5年分しか受け取れなかった」と言っているのは事実でしょう。
** 裁定審査官:年金が支給できるかどうか審査する役職の者
F県を通して申請していたなら、彼女が受けられた年金総額は36,800ドル(23年分)です。しかし彼女は8,000ドル(5年分)しか受けとれませんでした。
読んでいて他人ごとだとかたづけないで下さいね。これほど極端なケースはそう無いでしょうが、アメリカ在住の方々には自分で年金を棒にふってしまっている方が少なくありません。
とくに(!)、「25年間は働いていないと受けられない」「保険料を25年支払っていないと・・・」などとまちがった情報を仕入れ、「役所が言うんだからキットそうなんだろう」と一度はあきらめた方。その後に日本へ行って手続きなさった方はこのケースに近いことになってます。
「同じようなことやっちゃったかも、、、」と心あたりの方は、まぁこまでご連絡下さい。その棒にふった年金、必ず私が取り戻してみせます。
「電話での年金相談はお断り」はお決まりフレーズとなっておりますが、過去の年金を棒にふっちゃった方につきましてはなんとかしましょう。