【はじめに】
日本の国民・厚生・その他の共済など公的年金の手続きを私まぁこが代行した場合には、実際にアメリカでうける年金受給額は課税されません。 お手続きと同時に非課税処理をしているからです。
したがいまして、クライアントの方にとってはご参考まで。 「私は申告しなくても良いのだな」とかるく読み流して下さい。
本日のトピックは、ご自分で、あるいは知人・友人を通して日本の年金の請求手続きをした方々には課税される税金のお話です。
受け取る年齢で税率は違ってきます
「え? 日本の年金って税金かかるの?」とおっしゃる方がちらほら。 はい、受給額によっては(限度額を超えると)課税されます。
また、税金を受け取る人の年齢が「65歳未満」と「65歳以上」とでは、かかる税金の計算方法が違います。 65歳未満で年金を受け取ると、65歳以上に比べて税金の金額が大きくなるのです。
年金にかかる税金の計算方法
日本の確定申告上の年金の取り扱いは、「雑所得」です。 所得税と住民税の両方が課税されますが、日本国内ですのでこの2つの税金は、あらかじめ年金から差し引かれた状態で支給されています。
日本国内での年金の受給額のうち、「65歳未満は年間72万円までは非課税、65歳以上は年間120万円まで非課税」となります。
※1(2020年2月の年金にかかる税法の改正により、65歳未満は年間60万円まで非課税、65歳以上は年間114万円まで非課税となりました。
年金は年6回支払われますので、1回の年金受給額が12万円まで(65歳未満)、あるいは20万円まで(65歳以上)は非課税というのが目安ですね。上の※1と同様に、10万円まで(65歳未満)と19万円まで(65歳以上)に改正
さて上の限度額を超えている場合はどうか(?)というと、所得税の「雑所得」(年金)にかかる税率は「5.105%」です。(※住民税は各地方自治体で違います)
さてこの税率は変わりませんが、65歳を境に税額を計算するときに引かれる「控除」の計算方法が変わります。 分かり易く言いますと「65歳未満は控除が低く、65歳以上は高く」なります。 引かれる金額が高くなるのですから、受給額が同じであっても65歳以上となれば所得税は安くなります。
一方、アメリカでの課税はどうなるの?
年金受給者でアメリカ合衆国内の銀行口座を指定して年金を受けているという方については、毎年末または年始に源泉徴収票に似た様式の票が現住所に送られてくるはずです。
非居住者等に支払われた給与、報酬、年金および賞金の支払い調書
この徴票の中の「源泉徴収税額」を見て下さい。 金額は「0」になってますね? これは、日本では税金を徴収されていないという意味です。
したがってアメリカではこの票にある年間の年金受給額の全額を、IRSのフォームに従って申告しなければなりません。
IRSの Form 1040 を使用している方は、Line 16 に “Pensions and Annuities” とありますから、ここに年金の受給総額(年額)を記入します。
ところでちょっと、上の限度額の話
さっき、65歳未満は72万円まで、65歳以上は120万円まで課税されないって・・・?
これは日本国内での限度額の話です。 アメリカでタックス・リターンをなさる方は金額に関わらず全額を申告します。
そうは言っても、自分はバレないだろう?
バレます!
皆さんが受けている年金の情報は、日本年金機構⇒国税庁⇒IRS⇒SSA の順で報告されていますので、かならずバレます。
また日本に戻りますね、税金の計算方法ですが、
下の表を参照してください。
例えば、65歳以上で収入が350万円の場合には、「3,500,000円×75%-375,000円=2,250,000円」と計算します。
この225万円が「所得」となります。
この「所得」に、5.015%の所得税がかかるわけです。
実際に、65歳未満と65歳以上で、どれぐらい税額が異なるのか計算してみましょう。
厚生年金に加入していたサラリーマン家庭のモデル年金である「年額2,658,048円」で計算してみましょう。
65歳未満では、2,658,048円×75%-375,000円=1,618,536円が所得となります。これに5.105%を掛けた所得税は「82,626円」です。
65歳以上では、2,658,048円×100%-1,200,000円=1,458,048円が所得となります。所得税は「74,433円」です。
82,626-74,433=8,192円ですから、同じ金額の年金を受け取っていても、年間で「8,192円」も所得税に差がでます。
ここでは、所得税だけ取り上げましたが、住民税についても、「65歳未満」と「65歳以上」では、控除額に差があり、65歳未満は税額が大きくなります。 ※各地方自治体で税率が異なります。
「繰上げ支給」をするときは、支給額にかかる税金を検討しましょう
公的年金の支給は65歳以上ですが、繰上げ支給は60歳からできます。 ここで考えなければならないのは、繰上げ支給をすると支給額が減るだけではなく、税金は高くなるということです。
実際に繰り上げ支給をする方がめったにいないのはこのためです。 繰り上げ支給はそれがどうしても必要な場合に限ると考えた方がよさそうです。