クライアントの方で60歳~65歳までの特別支給の年金を受給した後、65歳からの年金の受給を一度みおくられた男性がいます。 この方は満70歳になってからの退職を予定されており、その機に日本の年金を受給(繰り下げ)される予定です。
ご相談にみえた時に私から勧めたわけではなく、ご本人から提案されました。 見るからに健康そう、非喫煙者で健康には自信がみなぎっています。 賢い選択だなと感心したものです。
65歳からもらえる老齢基礎年金を繰り下げ受給したい理由
老齢基礎年金は、原則65歳からもらえるようになります。 が、できれば70歳まで繰り下げ受給した方がいい理由として次の3つが思いうかびます。
理由1:昨今の60代は若くて元気、まだ現役バリバリ働けます!
今どきの65歳なんてほんとに若くて元気です。 若いころより能力があり、気力体力も充実している60代なのに働かないとはもったいないです。
とくに日本国内ですと少子化で若年層の労働人口が減っていますので、日本の経済力の減速を食い止めるためにもシニア層のパワーが社会から求めています。
そろそろ65歳という方も、現在50代・40代の若い層でも、「65歳でリタイアして年金生活」なんて考えて早々とふさぎ込むことはないと思います。
日本の年金は70歳まで繰り下げられます。 また70歳を過ぎてからもなお働き続けたとして、労働による収入が有っても年金の支給額が減額されることはありません。
理由2: アメリカのソーシャル・セキュリティが減額されない
ご自分で日本の年金を請求手続きをした場合、アメリカのソーシャル・セキュリティ(老齢年金)の受給額は60%まで減額されます。 これは日本の年金の受給額にかかわらず、実はアメリカの社会保障制度(ソーシャル・セキュリティ)に加入していた期間(年数)によって減額率が決まります。
Years of Substantial Earnings (充分なクレジットを有する年数)と減額率を差し引いた率(受給できる率)を表にしましたので、ご覧ください。
Years of substantial earnings (充分なクレジットを有する年数) | Percentage(受給できる率) |
30 or more | 90% |
29 | 85% |
28 | 80% |
27 | 75% |
26 | 70% |
25 | 65% |
24 | 60% |
23 | 55% |
22 | 50% |
21 | 45% |
20 or less | 40% |
Years of substantial earnings(サブスタンシャル・アーニング)が30年ある人でも、受給できるソーシャル・セキュリティの率は90%となっていますが、実際にはこの年数が35年の人は減額されていません。(100%受給) これは過去17年で400名以上の方の年金受給手続きをおこなった経験上、付け加えておきます。
70歳になってから日本の年金を請求しますと、そこからは当然アメリカのソーシャルセキュリティが減額されます。 この減額を阻止したい方、1ペニーも減額されることなく日本とアメリカの両方の年金を全額受け取りたい方は、右のまぁこの連絡先までご相談下さい。
理由3:年金は繰り下げてもらうと増えます!
「人間、いつ死ぬかわからないんだから早くもらわないと」と、すぐ請求する人は多いようです。
ですが実際にもらい始めてから「しまった、早まった!」と思う人はもっと多いようです。
アメリカのソーシャル・セキュリティでも、62歳から少なくもらい始めてしまい2年くらいたってから考え直して受給開始年齢を変更、過去に受けたソーシャル・セキュリティの総額を連邦社会保障省(SSA)に返却する人が増えています。
ですが日本の年金は一度開始年齢を決定すると、その後に変更はできないのですよ。 全額返してやりないし、という制度が日本年金機構には設けられていないのです。
現行のルールでは70歳まで年金を繰り下げた場合、年金の受給額は65歳時の額の42%増しになります。
繰り下げ請求と増額率
請求時の年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 | 8.4%~16.1% |
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 | 16.8%~24.5% |
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 | 25.2%~32.9% |
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 | 33.6%~41.3% |
70歳0ヵ月~ | 42.0% |
老齢基礎年金繰下げ請求にかかる注意点
年金の繰り下げを申し出ると、その日の年齢に応じて月単位で年金額が増えます。増倍率は、月あたり0.7%です。70歳まで繰り下げると、65歳からもらい始める年金額の1.42倍になります。さらに、2022年(4月)からは、75歳まで繰り下げることができます。倍増率は1.84倍となります。