年金の手続きをするのが遅くなってしまった。本来なら60歳の時に手続きをするはずが、70歳になってようやく年金を受け始めた。こういった人の場合、過去に受けるはずだった10年分の年金はいったいどうなるのか(?)
つい最近、こんなお手紙を頂きました。
まぁこさんの記事を読んで初めて自分が年金を受けられると知りました。 昨年日本へ行ってどうにか手続きできました。 そうしたら5年分の過去の年金が戻ってきました。それで喜んでいたのですが、私の友人がまぁこさんに手続きしてもらって11年分戻ってきたと言っています。
私は70歳、友人は71歳。日本で働いた期間も渡米した時期もほとんど変わりません。 私が損した気分です。 いったいどの辺の都合で彼には11年分も年金が支払われたのでしょうか?
この5年分しか戻ってこなかったという方、損したとは思わないで下さい。 年金には通常5年という時効が成立するからです。 年金にも時効があるのですよ。
しかし、「過去の分の年金はたった5年までで時効、それより前の年金は払わない」というのは理不尽というか、
あまりにかわいそうな人たちが存在します。
たとえば、60歳になって早々に日本に一時帰国して社会保険事務所(現在の年金事務所)へ出向いてみたところ、窓口で「あなたの年金の記録はありません」と言われた。 そんなはずはない。 確かにあるはずだから調べてくれ、と主張したがまったく取り合ってくれなかった。 こんな話はちょっと前ならよく有ったことです。
また別のケースで、「あなたは脱退手当金を受けています」と言われたが、調査を再開すると実は本人は脱退手当金を受けていなかった事実が判明したこともありました。
2006年頃にようやく、「消えた年金記録60万件」「台帳、地下に置きっぱなし」「記録を破棄」などの見出しが新聞を飾りました。 つい数年前のことです。
政府の年金記録の整備・保管が杜撰であったために、年金を受け取るのが遅くなった人に対して「5年より昔のものは時効です」って、理不尽すぎますね。 ですから時効をなくしませんか? と話が国会で取り上げられたのが2007年のことでした。
この年に年金の時効撤廃(てっぱい)案が可決された国会の様子を記憶されている方も多いと思います。私はこのとき、国会の牛歩という戦術を初めてテレビで観ました。投票箱の前にも後ろにも議員さんが列をなして、10分間に1歩くらいしか進まないのです。
結果、年金時効撤廃(てっぱい)案は可決しました。
私の記憶の中で一番お気の毒な例は、60歳から30年間自己の年金の資格を主張し続けた女性が、90歳になってようやく年金記録が判明したケースでした。
戦中・戦後の約4年間を会社員としてお勤めになった記録を、旧)社会保険庁(現在は日本年金機構)が探してくれない。やっと年金が支給されたときには、その累積額が1300万円になっていました。
90歳になって1300万円。まあ嬉しいでしょうが、その間の30年間のご苦労を思いますと、なんとも言葉にできない感情が沸きます。好きなことのいくつもできたはず。
喜んだのは息子や嫁か?
先のような苦労をせずとも時効を成立させない年金の受け方はあります。要は、相手方、旧)社会保険庁の落ち度を指摘すれば良いのです。
アメリカに在住の日本人のケースで最も多いのは、日本へ行くことがあったので社会保険事務所を訪ねたら、「あなたは日本で25年間*働いていますか?」とか「アメリカに住んでいるからそもそも受ける資格が足りない」など、誤った情報を職員に説明されて引き返した方々です。これはまちがい。
もっとひどいのは、「アメリカに住んでいる間に支払っていなかった過去の保険料の数十万円を今ここで支払ったら年金は支給されます」と言われた方もいました。ほんの10年前にはこんな職員も多かったのが事実です。
このような経緯がある場合は、その事実を立証すれば時効は成立しません。つまり10年、20年分の年金は全額支給されます。
実際、年金エルエルシーのお客様は1人残らず時効が不成立。全額を受けて頂いてます。
そんな事情ではなくて、「年金事務所へ行ったらデータベースに自分の記録がちゃんとあった」 この場合は残念(!)ですが、ご本人の責任なので時効は依然として成立します。5年分を有り難く受けて下さい。
*平成29年8月1日に年金を受ける資格期間の短縮措置が発効が発効され、現在は10年になっています。