年金受給者のための確定申告不要制度

もちろんこれは日本国内の制度です。 クライアントの多くが日本へ永住帰国する中、この確定申告不要制度も重要な情報になってきました。

日本では年金だけで生活している方の申告手続の負担を減らすため、公的年金等による収入が400万円以下で一定の要件を満たす場合には、所得税及び復興特別所得税の確定申告を行う必要がありません。

この「公的年金等」の中には海外からの年金、アメリカのソーシャル・セキュリティも含まれます。 この制度について説明します。

1.確定申告不要制度とは、

所得税及び復興特別所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得(※)とそれに対する所得税及び復興特別所得税の金額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収(給与や年金などの支払者が、あらかじめ所得税及び復興特別所得税を差し引いて国に納付する制度)された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続です。

公的年金は「雑所得」として課税の対象となっており、一定金額以上を受給するときには所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されていますので、確定申告を行って税金の過不足を精算する必要があります。 ただし、障害年金や遺族年金は非課税です。

年金受給者の確定申告手続きに伴う負担を減らすため、公的年金等に係る「確定申告不要制度」が設けられています。これによって多くの方が確定申告を行う必要がなくなっています。
※所得の金額とは総収入金額から必要経費などを差し引いた金額です。

2.どんな人が対象になるの?

公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で一定要件を満たす方が対象です。

確定申告不要制度によって、確定申告が不要となる方は以下のとおり。

◆確定申告不要制度の対象者

下記の1、2のいずれにも該当する方

  • 公的年金等(※1)の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下である

出典:政府広報オンライン(2018年1月24日)

 

源泉徴収の対象となる公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であっても、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合には、確定申告を行う必要があります。

外国において支払われる公的年金等、これを読んでいる皆さんが一番気になるソーシャル・セキュリティはどうなるのか? という話ですが、日本国内の銀行口座を送金先として指定している場合、公的年金等の雑収入あつかいですから、源泉徴収の対象となります。 つまり、アメリカのソーシャル・セキュリティと日本の年金の受け取り口座がともに日本国内の銀行口座で有る場合、それらと他の年金を合わせても400万円以下であれば、確定申告は不要です。

ソーシャル・セキュリティの受け取り先銀行口座が海外、たとえばアメリカ国内である場合には、アメリカの税法に従うことになります。 しかし既に米国市民権や永住権を放棄しており、アメリカの連邦政府(米国歳入省IRS)にタックス・リターンを申告しなくても良いことになってる方については、日本での「雑収入」となりませんので、確定申告が必要となります。

※1 公的年金等とは
国民年金や厚生年金、共済組合から支給を受ける老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、老齢共済年金)恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金など。

※2 公的年金等に係る雑所得以外の所得とは
生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金給与所得、生命保険の満期返戻金など。

3.不要制度対象者になるんだけど、一応申告が必要な人とは?

所得税の還付を受ける方や住民税の申告が必要な方

◆所得税の還付を受ける方

公的年金等から所得税や復興特別所得税が源泉徴収されている方の中で、かつ以下にあてはまる場合は所得税の還付が受けられる可能性があります。このような場合に、還付を受けるためには、確定申告書を提出する必要があります。

  • マイホームを住宅ローンなどで取得した場合
  • 一定額以上の医療費を支払った場合
  • 災害や盗難にあった場合

所得税及び復興特別所得税の確定申告の手続などに関する情報は、居住している地域の税務署に問い合わせるのが一番です。 地方自治体では毎年確定申告の季節になると、市・区・町・村の役所・役場で税理士を招いて無料相談会を催しているところがあります。

最寄りの税務署の所在地はの検索はこちら ⇒ 別ウインドウで開きます国税庁「国税局・税務署を調べる」

◆住民税の申告が必要な場合

所得税及び復興特別所得税の確定申告が不要な場合であっても、以下に該当する方は住民税の申告が必要な場合があります。

  • 公的年金などに係る雑所得のみがある方で、「公的年金などの源泉徴収票」に記載されている控除(社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除、基礎控除等)以外の各種控除(※3)の適用を受ける場合
  • 公的年金などに係る雑所得以外の所得がある場合
    ※3 生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除など

なお、所得税及び復興特別所得税の確定申告をした方は、税務署から地方公共団体に確定申告書等がデータで送信されますので、改めて住民税の申告書を提出する必要はありません。 これも、詳しいことは、居住地の市・区・町・村の役所にお問い合わせください。

最後に、公的年金以外にも401KやIRAなどの私的年金(Pension) 等があり、雑収入だけでも400万円を超える方はどうするのか?

他にも家賃収入があってハナから確定申告をしなければならない人はどうするのか? という疑問があると思います。 そちらは別の記事にしました。

日本での確定申告 - 永住帰国後、税金はどうなる?

※ これから日本の年金を受け始めようという方で、日本・アメリカの両方の年金を1ペニーも減額されることなく、しかも非課税で受けたい方は、私まぁこまで(連絡先は右サイド)ご相談下さいませ。 これからあなたが受けとる日本の年金が「WEP減額対象の非該当」となる申請を、SSA(米国社会保障省)に対して行います。