国民年金が WEP(棚ぼた防止規定)の減額対象外になったのはいつから?

あるクライアント様から、最近こんな情報が寄せられました。

「国民年金と厚生年金の1階部分(実質は国民年金と同じ)は『棚ぼた防止規定(WEP)の対象外になった』という記事をインターネットで見かけました」

ん? いまさらなぜ?

と思い、その記事(※2)を紹介いただきました。 そこには、

「SSAからの更なる吉報(2022年9月)」と見出しがあり、厚生年金受給者が受給する1階部分の国民年金もWEP適用外」

と書いてあります。 再度言いますが、なにをいまさら?

それって、1983年に米国議会でWEPが可決されて以来ず~っと変わってませんけど・・・

読みすすめますと、

「SSAからの吉報!! 国民年金はWEPの適用外と決定!!」とあります。

「国民年金(厚生年金保険の1階部分の基礎年金も同様)はWEPの対象外になることが決定しました」と書かれています。

この「決定」は言い過ぎです。 「認めた」というのが妥当でしょう。 もとの英語の文面を読みたいところですが、おそらく “determined” とは書いていないでしょう。 ”confirmed(確認された)” または ”admitted(認めた)” となっているはず。

「吉報」でもなんでもないです、昔っからですから。 なのに、この記事、

「(Windfall Elimination Provision 棚ぼた条項)の適用対象外であるという通知が、〇〇室のXX長官補名でメールで関係先に発送されました」

と書いてあります。 ん、なわけないでしょ。 連邦政府の機関であるSSA(社会保障省)が公官名で通知書をメールで発信するって・・・ あり得ません! 「こうですか?」と質問されたから「はい、そうです」と返答することはあっても、です。

もともと、棚ぼた防止規定(WEP)が米国議会で可決された1983年(レーガン政権時)からずっと、日本の国民年金および厚生年金保険の1階部分である基礎年金の部分は、WEPの減額対象にはなっていません。

なぜなら、国民年金や厚生年金の1階部分は「被用者の年金」では無いからです。被用者とは、雇用されて働く者という意味ですので、一般に会社員や公務員を指します。 国民年金は実際には労働していなくても(学生・被扶養者を含め)保険料を支払うことができますので、被用者の年金ではありません。 よって、もともとWEPの減額対象とはなりません。

1984年の WEP 施行以来ず~っと同じ、減額対象外です。

1983年に可決、1984年1月から施行されたものの当時は、海外から送られてくるいわゆる、

Forign pensions or annuities NOT covered by U.S. Social Security(ソーシャル・セキュリティでカバーされていない年金や恩給)

についてのガイダンスが作られておらず、SSA(米国社会保障省)の職員に対して WEP(棚ぼた防止規定)に関するトレーニングが充分になされていませんでした。

とくに日本のような、米国の総人口に対する邦人人口の比率からしてマイナーな国から送金される年金を、さて減額の対象にするのがしないのか(?)については皆無といっていいほど教育がなされていませんでした。

データベース上の取り扱いでもその管理システムにおいても、何が減額対象でどれが対象外なのか(?)その内訳カテゴリが決まっていませんでした。 つまり Pensions or Annuities “Not covered by Social Security” は十把一絡げ(じゅっぱひとからげ)に減額対象とした、というのが実情でした。

それでも施行当時から2004年くらいまでは、日本の年金の手続きをする日本人やもと邦人は少数派。 いたとしても日本の企業の駐在員くらいでしたので、WEPの教育を受けていないSSA職員ばかりで対応しても大した問題・騒ぎにはならなかったのです。

2004~2005年ころまでは

この背景を踏まえて、私が年金の仕事を始めたのは2003年8月ですが、この時より今日までず~っと、

ソーシャル・セキュリティの減額回避処理

を遂行してきました。

2003年、私が全米に向けて「日本人の皆さん!日本の年金を受けられますよお~」とキャンペーンを始めた年です。

(当時はまだあった)日本語の新聞・「日米タイムズ」と「北米毎日」でコラムを書き続け、ラジオ毎日では週1回水曜日に日本の年金の番組を4年間もっておりました。

ニューヨーク、ノースカロライナ、オレゴン、ワシントンおよびカリフォルニアの5つの州で「日本の年金を受けられますよ」いう勉強会を催したところ、「日本の年金が受けられるなんて、そんな夢みたいなことあるか! 詐欺師が来た!」と、各地でひどい扱いを受けました。 一度は場所を提供してくれた日本人会や仏教会から「やっぱり会場は提供できません」とお断りがきたり、あからさまな妨害も受けました。

そんな中でごく一部の日本人(もと駐在員)の理解を得て、なんとかこの仕事を続けてこられたわけですが、そうなって初めて2004・5年くらいから(私の知らないところで)、ご自分で日本に行ったり日本国内の親族の助けを得て年金の手続きを済ませた方々の、「日本の年金を受けたら、アメリカのソーシャル・セキュリティが減額された!」という声が出始めました。

それまで私は、「年金請求をする前に、ソーシャル・セキュリティの減額回避の処理をするのが当然のこと」と認識していましたので、そうか、

棚ぼた防止規定(WEP)の本来の目的がよくわからない人が自分で手続きをしたら、減額されてしまうのか・・・

と知った次第です。

さて、国民年金と厚生年金保険の1階部分が WEP の減額対象になる・ならないの論点自体、海外在住で日本の年金を受けている、あるいはこれから受けようとしている皆様には何の朗報にもなりません。

なぜなら、棚ぼた防止規定の全文を読まれている方ならお分かりですね?

棚ぼた防止規定 (WEP) 原文

棚ぼた防止規定を和訳してみた - I

棚ぼた防止規定を和訳してみた - II

WEPの減額対象になるのは厚生年金の2階部分がある人、つまり日本の企業に一度は勤めたことがある人にとっては、上のような記事に心を惑わされる必要はないからです。

WEP本文には、海外から何らかの Pensions or Annuities を受けている場合、その受給額に関係なく、SSA TAX を支払った年数(Number of Subustatial Earning Years) に従って減額(最大60%)と書いてあります。 GPO (Government Pension Offset) を勘案した後も、この減額率の表は変わりません。

厚生年金保険に加入していた期間とSSA税を納めていた期間がダブっている人(ダブっていない人も)にとっては朗報ではありません。

 

※1 右上の表の “Percentage” は受給額の比率です。減額率ではありません。減額率は、
100% – “Percentage” となります。

※2 ほぼ個人のブログともいえる記事で、難解な日本語をあまり美しくないフォントで、さらに行間無く書かれているため、読み手にかなりの苦行を強いることになります。 そこで、この記事の出典・引用はあえて控えさせて頂きます。

※3 これから日本の年金を受け始めようという方で、日本・アメリカの両方の年金を1ペニーも減額されることなく、しかも非課税で受けたい方は、私まぁこまで(連絡先は右サイド)ご相談下さいませ。 これからあなたが受けとる日本の年金が「WEP減額対象の非該当」となる申請を、SSA(米国社会保障省)に対して行います。