アメリカに長く住んでいて、現在は日本の老齢年金やアメリカのソーシャル・セキュリティを受ける年齢に達している人にとっては、第3号被保険者がどうだの~ 専業主婦がなんだの~ ぜんぜん関係が無いように思われがちなのですが、実は一度は調査してみる価値がある人はわりと多いのです。
とくに若い頃(渡米前に)日本で結婚していたことがある方は今日のこの記事【必読】です。
婚姻関係にあった相手(配偶者)が会社員・公務員(第2号被保険者)であって、自身は専業主婦だった方。 その後にたとえ離婚したとしても、婚姻関係にあった期間が少しでも(1か月以上)あるならば年金の第3号被保険者であった期間、つまり日本の老齢年金が受けられる、あるいは年金の受給額が上がることになります。
ね、朗報でしょ? そこで
その期間って、どうやって調べるの?
という疑問(心配)が湧きますね。
大丈夫、日本年金機構では皆さんに替わってこの潜伏している第3号被保険者であった期間を調査することができます。 日本年金機構では、というよりも2008年に私が旧)社会保険庁での職員の教育係を務めた際に残してきたシステムや様式が、2010年に日本年金機構に替わった後もずっと引き継がれています、と言った方が良いです。
そもそも、第3号被保険者って何?
日本の年金制度のコアとなる国民年金制度ですが、日本に住む人なら誰でも(国籍にかかわらず、外国人登録をしている者を含む)20歳から60歳まで40年間強制加入とされ、保険料の支払いが義務付けられています。
国民年金の加入の仕方はざっくり、下の3種類があります。
・第1号被保険者……自営業、学生など
・第2号被保険者……会社や役所に勤める厚生年金加入者
・第3号被保険者……第2号被保険者に扶養される配偶者
第3号被保険者は、他の2種類と大きく違うところがあります。 それは「保険料の負担がまったくない!」ということです。
第1号被保険者(自営・学生)ですと、毎月1万6000円ほど(令和2年現在)の保険料がかかります。 第2号被保険者(会社員・公務員)ならその給与に応じた厚生年金保険料を負担しています。 (お給料から天引き) その中には国民年金の保険料分も含まれていますので負担額ゼロではありません。
一方、第3号被保険者はどうかというと、本人の負担額は全くの「ゼロ」なのです。 日本在住者の場合、年金と健康保険の加入はセットになってますので、年金の保険料と通院・入院などの医療にかかる健康保険料がなんと、両方無料になってしまうのです。
第3号は保険料の支払いがゼロ=保険料負担が一切無い
これは絶大なメリットです。 つまり
国民年金保険料を100%支払ったことになる
のですよ。
したがって第3号被保険者が将来もらえる老齢年金の受給額は、その期間については100%支払ったものとして計算されます。 (第1号被保険者が保険料を満額支払ったのと同等の扱いになる)
同じように保険料を支払わない免除については、免除された割合(全額・4分の3・半額・4分の1免除)に応じて年金の受け取り額が減額されるのと比較しますと、第3号被保険者の取り扱いがいかにお得かわかると思います。
また、現在まだ老齢年金を受ける年齢に達していない方でも、障害年金や遺族年金を受けるようなことになった場合には「保険料をある程度納付している」という納付要件がクリアになりますので、ここでも第3号被保険者はとってもお得だと言えます。
ところで、第3号被保険者の条件とは?
以下の3つです。
1. 第2号被保険者の
2. 被扶養
3. 配偶者
この3つの条件を満たせばよいことになります。 以降は扶養している側を夫、扶養されている側を妻としてお話しします。 (最近は専業主夫もいますが)
1は、夫が会社や役所などに勤め、厚生年金に加入している必要があるということです。 自営業者に扶養されていても第3号被保険者にはなれません。
2は「扶養されている」ということですが、具体的な条件を見てみましょう。
一般的には夫と同一世帯に入っていて年収が130万円未満でかつ夫の年収の半分未満、ということになります。 世にいう「130万円の壁」というものですね。 障がい者や60歳以上の人の場合は180万円未満となります。
別居の場合であっても、年収が130万円(または180万円)未満でかつ夫より年収が少なくて、生活を夫の収入に頼っている場合には扶養されている扱いになることにご留意ください。
では、どうやって第3号被保険者だった期間を調査してもらうのか?
全国各地になる日本年金機構・年金事務所へ行き、お客様相談室の担当者に相談して下さい。
その際に、「過去に日本国内で婚姻関係にあった期間がある」ことをまず担当者に説明します。 そうしますと、担当者は下のような書類(チェックシート)を出してくれるはずです。
「出してくれるはずです」と言いましたが、私が旧)社会保険庁の各地の社会保険事務所にてトレーニングを行った時期は2008年でして、この際に東京都(都下を含む全域)、神奈川県、千葉県に当時あった社会保険事務所で教育を担当しました。
この1都2県内の年金事務所であれば、まだこのチェックシート(用紙)を使用しています。
今週ためしに千代田年金事務所と世田谷年金事務所に電話を入れましたところ、「はい、まだ使用していますよ」とのことでした。
ですが、たまに地方の年金事務所のお客様相談室でこのチェックシートのことを知らないという事態に遭遇することがあります。 こんな時のために、この用紙のタイトル「所定年齢で受給権が発生しない場合のカラ期間チェックシート」を控えておくことを薦めます。
長くなりましたが、このチェックシートの中央(赤傍線で囲んでいる箇所)をご覧ください。 過去の婚姻歴について質問がありますね? ここに当時のことを記入して提出します。
めでたく記入した婚姻歴が確認された場合には、その期間は第3号被保険者の年金制度加入期間となって老齢厚生・基礎年金が受けられますし、既に受給権がある方においては年金の受け取り額が高くなります。
おっと、離婚したモト配偶者に感謝することをお忘れなく。