老後に備えない生き方 – その1

今週、日本の出版社から書評を依頼された。 その本のタイトルがまさにこれ、

老後に備えない生き方

です。

ところで皆さん、「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健 共著)という本のタイトルを一度は耳にされたか、既に読まれているかと思います。

誰にも嫌われたくない~ぃという日本人が多い中、このタイトルは おっ!と目をひいたのか、あるいはその内容が良かったのか噂はあっという間に広がり、「嫌われる勇気」は2013年発刊以来8年間、常にベストセラートップ10に挙がってます。

「たぶん、こういうこと書いてんじゃないかな~」と思っていたことがそのままスッキリまとめられた本でしたので、読み終わってから清々しい気持ちになったものです。 内容をかいつまみますと、

  • すべての悩みは人間関係が原因
  • 承認欲求の権化になるな
  • 他人にどうおもわれるかより自分はどうしたいか?を考えて生きろ

という実にシンプルなことを当たり前のように書いている本です。

さて、今回書評を依頼された老後に備えない生き方も岸見一郎氏の著書です。

実はまだ読んでいません。 ただ、読む前から内容はわかるような気がしています。

きょうびの日本って、終活の準備とかテキストみたいな本になって発刊されたり、「人生100年時代、老後の備え方」なんてタイトルのいわゆる老後の指南書がやたら出回ってませんか?

その中で、「老後に備えない」というのは、なるほど少しインパクトがあります。

20代で世界各国を周り、30代で渡米、生きてくるのが精いっぱい。 そのくせやりたいことは先延ばしにできない性格(せっかち)ですぐ行動しまい、老後のことなんて考えもしなかった私にとってはこの本のタイトル、

ひじょうに心強い響き

です。

思うに、「私は老後、〇〇をしようと思っている」と口癖のように唱えて、

今をどう生きるか?

考えてもいない、大事な時間をただ我慢するだけで浪費している邦人が、日本国内にもアメリカにも多いと思うんです。

私はなにも、年金の心配はするな(!)とか、投資や資産管理は考えなくて良いと言ってるわけではありません。 ソーシャル・セキュリティが減額されないよう、日本の年金を受け取るときは気をつけてね~と数々の記事を書いてきました。

ですが、老後を楽しみに「今やりたいこと・やるべきこと」を我慢してる人には、

生きているって言えるんだろうか? 今できることを先延ばしにしていいのか?

と言いたい。 「老後のために生きてる人」って、いっぱいいますよね。 こういう人に限って今のコロナ禍、「人間いつ死ぬか分からない」などとまったく矛盾したことを言ってます。

と、ここまで書いていて思い出しました。 あれは日本の年金の仕事を始めた頃だから、2003年か翌年だったはず。 日系の新聞紙上で私のコラムを読んだという日本人男性から電話があったのですが、その執拗な問い合わせ(あまたの質問)に辟易したことがありました。 (当時はまだ、電話相談は無料でした)

この男性は渡米前に日本で国民年金保険の任意加入を済ませ、毎年の保険料を納め怠りなく、きっかり40年納める計画だと揚々と話していました。

「あと、もう1つだけ質問」「あ、もうひとつだけ」とホントーに次からつぎへと質問が続いて1時間以上、「も~えーわ!」と言いそうになりながら私はハタと

「ところで現在おいくつですか?」

と聞いてみました。 当時の国民年金保険法の規定に則って回答していたのですが、「あれ、この人が65歳になるのは果たしていつの事だろう?」と思ったのです。 そうです。 国民年金保険法は頻繁に改訂されますし、日本年金機構の対応も日々変わってきているからです。

この人なんと、まだ 33歳! だったのです。

33歳で国民年金にこれだけ執着する日本人男性がいることも驚きでしたが、何より驚いたのは、日本の年金を受けるためにアメリカ国内ではできるだけ働かないようにして、もし何かの拍子に働く機会があったらお給料は現金のみ。 税金はいっさい支払わないと徹底していたことでした。

33歳と言えば、私はちょうどアメリカに派遣された年齢です。 見渡してみても、アメリカに在住している日本人の多くは20代後半から30代前半に渡米されているよう経験上の感触があります。 33歳ならば今から仕事を探そう(!)とか起業しよう(!)とか、そういった年齢では?というのが私の認識。

その若さで

老後のための人生

だなんて、もったいない。

この男性はそれからの18年を何もしないで、今もアメリカのどこかに住んでいらっしゃるのでしょうか。 もったいないというか、本当に愚かな話です、という今日のトピックでした。