令和7年ことしの年金制度改革・底上げ措置

関連法では、パートなどで働く人が厚生年金に加入しやすくなるよう

▽ 「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金要件
▽ 現在、従業員51人以上としている企業規模の要件
が撤廃されることになります。

また、基礎年金を底上げする措置が付則に盛り込まれました。

出典:NHK News オンライン(2025年6月24日)

果たしてこれは、国民にとって良いことなのか悪いことなのか? 国だけ得するんじゃないか? なんてうがった目で眺めているあなた、はいそうです。

この措置、多くの働く国民にとっては不利益をもたらします。 そこで今日は、この「不利益」(デメリット)についてメリットも含めて、国政・雇用主・被雇用者(労働者)の3つの側面に分けて、説明しましょう。

①【国政(政府)】の視点から

メリット

  • 年金財政の安定化:より多くの労働者が厚生年金保険料を負担することで、制度の支え手が増える。

  • 労働参加率の向上:扶養の枠に縛られず働けるようになれば、特に女性や高齢者の就労促進が期待できる。

  • 税収の増加:所得が増え、社会保険料や所得税の納付者が増えることで、税収が底上げされる。

デメリット

  • 短期的な制度運営コストの増加:制度変更に伴う事務手続きや周知・指導にかかるコスト。

  • 反発や混乱への対応:制度変更に伴う批判(特に保険料負担が増える層から)や理解不足による混乱に対応する必要。

②【雇用主】の視点から

メリット

  • 人材の安定確保:パートタイム労働者や短時間勤務者が長時間労働を選びやすくなり、人手不足の解消に貢献。

  • 労働時間管理の自由度:年収制限に配慮せずに勤務時間や業務分担を設計できるようになる。

デメリット

  • 社会保険料の事業主負担増加:新たに厚生年金加入となったパート等に対して、雇用主側も保険料を折半する必要がある。

  • 事務負担の増加:対象者の判定や保険料徴収の手続きが煩雑になる可能性。

③【被雇用者】の視点から(特に、これまで配偶者扶養に入っていた人)

メリット

  • 就業時間を自由に設定できる:「106万円の壁」を意識せず働けるため、能力や希望に応じた就業が可能になる。

  • 将来の年金受給額の増加:厚生年金に加入することで、将来もらえる年金額が基礎年金より多くなる可能性。

  • 雇用の自立性向上:扶養から外れて「自分の年金を自分で作る」意識や経済的自立性が向上する。

デメリット

  • 手取り額の減少:厚生年金に加入することで社会保険料が引かれ、短期的には手取り収入が減る。

  • 扶養手当の喪失:配偶者の会社で扶養手当が支給されている場合、それが打ち切られる可能性がある。
    とくに、配偶者の会社がその扶養家族を第3号被保険者という扱いで保険料負担してくれていた場合、この恩恵は無くなります。

  • 制度理解が必要:新しい制度や年金額の試算、働き方の再検討が求められ、心理的・実務的負担がある。
    一体、どれくらいの被扶養者が、この新制度のトリックを理解してくれるのでしょうか?

まとめ:影響の全体像

視点 メリット デメリット
国政 制度の持続性向上、税・保険料収入増 制度変更コスト、世論対応
雇用主 人材確保、業務設計の柔軟性 保険料負担、事務増加
被雇用者 就労の自由、年金増、自立促進 手取り減、扶養手当減、負担増