「棚ぼた防止規定」を和訳してみた – I

ネット上でアメリカのソーシャル・セキュリティについて書かれている多くの記事に引用やリンクを貼られているので、棚ぼた防止規定(Windfall Elimination Provision)ということばを一度は目にされていると思います。

私も何度か記事にリンクしていますが、そういえば、この全文を日本語にしたものをネット上のどこでも見かけたことがありません。

まあ、日本の年金を受けたらソーシャル・セキュリティが減額されるとあれば、アメリカ在住者なら難なく英語全文を読んでみるからなのでしょう。 が、私は Google Translate を使いつつもなお、変(?)な日本語になっちゃってるのに辟易していまして、今回こういったお堅い英語の規定を読むのは苦手、という方のために僭越ながら全文を和訳してみることにしました。

なお、日本語に直すにあたり敢えて私が「英和辞書だと○○と訳されているが、社会保障制度という背景から考えるとxxの方がふさわしい」と判断された場合には、訳語を替えています。

例えば、Retirement Benefits は退職給付とでもするべきなのでしょうが、日本とアメリカの両方の年金に興味がある方々のため、ここはやはり「老齢年金」と訳しました。 そのほか便宜上訳語を替えたものについては、「棚ぼた防止規定 Windfall Elimination Provision を和訳してみた – II」 の脚注に列記しましたのでそちらもご覧ください。

 

棚ぼた防止規定 (Windfall Elimination Provision) 2019 全文

老齢年金や障害年金の給付は減額されることがあります。

年金の支給額を計算する上で、棚ぼた防止規定が影響します。 例えば、あなたが働いているところが政府機関であったり海外にある雇用主などの事情で、お給料からソーシャル・セキュリティ税が天引きされていない場合。 あるいは公的年金以外の老齢・障害年金を受けている場合には、ソーシャル・セキュリティは減額される可能性があります。

支給額に影響するのはどんなとき?

労働者の給与からソーシャル・セキュリティ税を天引きしていなかった雇用主が、その労働者に対して退職年金や障害年金を給付する場合で、併せてソーシャル・セキュリティの老齢・障害年金を受ける資格がある場合には、棚ぼた防止規定が影響します。

この規定は対象者が:

1985年以降に62歳に達した時、

1985年以降に心身の障害がある時、

ソーシャル・セキュリティ税を天引きしなかった雇用主から支給される老齢・障害年金の受給資格が発生した時が1985年以降である。 このルールは対象者がまだ勤労中であっても適用される。

この規定は、1965年以降の公務員退職金制度(Civil Service Retirement Systems) のもと公務員であった者にも影響します。

ただし、労働者の職務が連邦職員退職金制度(Federal Employee’s Retirement Systems)のもと連邦政府の公務員のみであった者については、そのソーシャル・セキュリティの支給額は減額されることはありません。

その影響とは?

ソーシャル・セキュリティは勤労者が退職する前の所得の一部を置き換える目的のものです。

ソーシャル・セキュリティの給付は、賃金の伸びに合わせて勤労者の月収を計算した値に基づいています。

まず勤労者の平均月収を3つの値に分け、次にその値に3つの要因を掛け合わせて勤労者の主要保険給付金(Primary Insurance Amount) を総計します。

例えば2019年に62歳となった勤労者の場合、平均月収のうちの最初の926ドルは90%でカウントされ、次の926~5,583ドルまでは32%をカウントします。5,583ドル以上の収入の部分では、15%だけがカウントされる計算です。 3つ総計(平均月収が低い場合には1つか2つの総計もありえる)は、この勤労者がフルリタイアメント・エイジに達した時、あるいはその前や後に退職するかに応じて減額あるいは増額されます。 こうして毎月の老齢年金の支給額が決定します。

この式を適用すると、低賃金労働者に支払われる年金の給付が平均月収に占める割合は、高給の労働者のパーセンテージより高くなります。 2019年に62歳となる勤労者で平均月収が3,000ドルの人がフルリタイアメントの年齢で受け取れるソーシャル・セキュリティの額は 1,497ドル(平均月収の約49パーセント)となります。 (実際にはこれに適用生活費分を足して調整した額)

一方平均月収 $8,000 の人はどうでしょうか。 フルリタイアメントの歳で受け取れるソーシャル・セキュリティの額は 2,686ドル です。 これは本人の平均月収の約33パーセントで、この額に適用生活費分を足した金額になります。

どちらの勤労者も、老齢年金を受ける年齢を早めますと支給額は減ります。

どうして異なる計算式を使うの?

1983年以前、主な仕事が連邦政府の社会保障制度でカバーされていなかった勤労者については、彼らが受けるソーシャル・セキュリティ(老齢・障害年金)は、まるで長期・低賃金労働者であるかのように計算されていました。 より高いパーセンテージで算出されるソーシャル・セキュリティの給付を受けながらも、併せて社会保障税(ソーシャル・セキュリティ税)を支払わなかった方の仕事から給付されるほかの公的・私的年金も受け取れる、という利点がありました。

連邦議会は上のような一部の人々の利益を排除するために、Windfall Elimination Provision (棚ぼた防止規定)を可決しました。

この規定の下で、計算式のうち90%で計算される要素を減らし、1986年から1989年の間に62歳に達するか、または身体障害者になった労働者のために、給付を段階的に計算する方法を導入します。

また1990年以降に62歳に達するか身体障害者になった人々については、90パーセントで計算される部分を40パーセントに減らします。

この続きは、「棚ぼた防止規定」を和訳してみた – II 

※ これから日本の年金を受け始めようという方で、日本・アメリカの両方の年金を1ペニーも減額されることなく、しかも非課税で受けたい方は、私まぁこまで(連絡先は右サイド)ご相談下さいませ。 これからあなたが受けとる日本の年金が「WEP減額対象の非該当」となる申請を、SSA(米国社会保障省)に対して行います。