日本の年金 なぜ信用できないのか?

日本国内に限ってハタから見てますと、年金は「あてにならない」「信用できない」と回答する人が、とくに20代~30代においては多いと思います。

私にも甥4人、姪1人がおります。 そろって皆30代ですが、「保険料を払うばっかりで、自分たちが65歳になってから、年金の制度が存続しているかすらも期待していない」と言います。

ではなぜそう思うのか?

と問いますと、具体的に理由を整然と答えられる者はいません。 とくに私がこのような仕事をしていますので、「う~ん、めったなことは言えない」と思っているのでしょう。

しかし、日本の年金制度が信用されていないのは今に限ったことではありません。 アメリカ国内で日本の年金を受け続けているクライアントさんでも、「若い時は年金のことなんかまるで期待してなかった」「アメリカに来てまで日本の年金が受けられるとは思ってもみなかった」という方が殆どです。

今日はその、「日本の年金が信用されないのはなぜ?」について検証してみます。

1 悪いニュースが多すぎる

新聞でもテレビでも、おしなべて報道においては悪いニュースの方が国民のウケが良いはずです。新聞の見出しに、「消えた年金、〇〇〇万件」とあれば、読者はまずそこから読みます。

テレビ欄に「年金制度ははたして維持できるのか?」と書かれていれば、視聴者は「どれどれ、このニュースは見てみようか」、となりますね。

あらゆるメディアでは、年金についての悪いニュースが多く報じられ、良いニュースはほとんど報じられない傾向があります。

1つの顕著な例ですが、以前に年金運用で大損したというニュースが一度だけ出たことがあります。 これを過去に見て(聞いて)今でも「国の年金の資金運用がうまくいっておらず、財源が破綻する」と思っている人が多いと思います。 実際私の甥(30代)はアンポンタンなので、今でもそうなんだとキッパリ主張してました。

が実は現在、日本の年金資金運用は過去最高水準の残高を積み上げているのです。 この良いニュースが大きく報じられることはまずありません。 日本ではおそらくほとんどの人は知らないでしょう。

過去においてはさんざんテレビで「年金の破綻」について特集を組んでいましたが、最近はみかけなくなりましたね? 政府(厚生労働省)ではやっと徹底的なシミュレーション結果を国民に公表したので、日本経済を正当に評価する学者の殆どは破綻説を口にしなくなりました。

今でも年金破綻説をとなえる学者がいたら、かなり馬鹿にされるでしょうし、国会においてもアホな発言をする議員はもういなくなっています。

それでも、「実は年金、破綻しないそうです・・・」なんてテレビの特集は見たことがありません。 やはり国民はまだ「ネガティブなテーマにしか飛びつかない」ことを、報道する側では分かっているといえます。

20~30代の若年層が入手しているニュースがこのようなネガティブな情報に偏っていることが、年金不信の一因ではないかと。

2 今は保険料を払うばかり、将来もらえるという期待がわかない

そもそも、年金の制度ほど、若い人が不公平感を感じる制度はありません。

人生をざっと、「子ども〜学生の時代」「社会人として働く時代」「年金生活時代」と3つに分けてみますと、社会人として働く時代は保険料を払うばっかり。 不公平感しかないのは当然かもしれません。

生涯のうちでも「保険料を支払う期間」が一般的には一番長く、20歳から65歳までとすれば45年間ひたすら払い続け、「何ももらうものがない」期間です。

ようやく年金が受けられる年齢になると、「やっぱり、この制度があってよかったな」と実感することになるのですが、とにかく20〜30代においては制度のメリットが何もないように感じられます。

ただし、実際には若年層においても年金制度のありがたみを感じるケースがあります。 これは障害年金だったり遺族年金の受給の対象に若くして(不幸な話ですが)なった場合です。

親が早くに亡くなってしまったが、遺族年金のおかげで高校卒業まで行くことができた。 事故がもとで障害をもつことになったが障害年金を受けられたなどの経験があれば、年金のありがたみはわかるでしょう。 しかし割合としてはやはり少数です。

3 「損得」を日本国内だけで考えており、比較する対象がない

日本国内では「年金は払い損」だと思っている人が多数派です。 でもアメリカに住んでいる方はそう思いませんね?

アメリカ在住の、とくに私のクライアントさんは「日本の年金はハズレが無い宝くじ」だと口々に言います。 それは比較する対象、ソーシャル・セキュリティ(退職年金)があるからです。

アメリカのソーシャル・セキュリティは「自分が払ったソーシャル・セキュリティ税(SSA TAX)に利息が付かないで、ただもどってくるだけ」です。 これに対し、日本の年金はまさに「保険」であって掛け金の数10倍、人によっては100倍のコスパがあります。

現在70~80代のクライアントさんの例をざっと見ていますと、日本で20代の頃に支払っていた厚生年金の保険料は月々100円程度だったのが、2年程度お勤めして渡米し、現在アメリカで受けている年金の受給額は月に1万円と実に、ちょうど100倍の額を受け取っています。

インフレ・デフレでお金の価値が上下するにしても、50年前の100円に現在の1万円の価値があるかどうかを考えれば、日本の年金のコストパフォーマンスがどれだけすばらしいか、お分かりいただけると思います。

それなのに日本国内ではまだ「払い損」と思っている人が多くいます。 比較する対象が無いからです。

さらに言いますと、日本で住民税や所得税、消費税を払っていて「これが払い損か得か」、実は誰もわかっていません。 なんとなく損だなと不信感を持っていても、誰も「周りにある道路、水道、公共施設などいろんなものが充実するために使われている」と説明してくれる人がいません。マスコミは依然、ネガティブなニュースしか報道してくれません。

消費税がとうとう10%になっても、「まあそんなものかな」程度に思っているのが実情です。

4 そもそも仕組みが分かっていない・・・

最後の理由として私が一番感じているのは、「理由はわからない(知らない)が不信を持っている」状況です。 これは根深い問題です。 世の中に「知らないけど、まあそんなもんだろう」と受け入れていることはたくさんあるからです。

先ほど住民税の損得の話をしましたが、例えば毎日私たちの生活から出るごみを地方自治体が集めにきてくれている費用や実務的な諸問題の解決のために使っていると説明すれば、それに不公平感を持つ人はほとんどいないと思います。 まあ、そんなものかなと。

実は国民「一人あたり」年間18,200円がゴミ処理のための費用負担ですが、この費用でよく維持できていると驚きます。 地方税の一部がこれに充てられているからです。

年金の保険料が「払い損」だと感じているとすれば、それは年金記録問題のトラブルや給付のトラブル、個人情報の流出などのニュースが無ければ、国民は住民税と同じく「年金の仕組みはよくわからないけど、いま払っている保険料はまあなんとか政府がしていれているんだろう」程度に年金制度を達観してくれたのかもしれない、と思うのです。

しかし日本の年金制度というのはその理解を深めれば深めるほどに、よく考えられた仕組みであり、不公平をできるだけ大きくしないように細かい工夫が凝らされています。 また時代の流れに従って改革が施され、特例・特典なども生み出されています。

ただ単に「知らない」ことが不信感の原因だとしたら、それは実にアホらしいことです。

 

さて、「年金は払い損」と感じている日本の若者よ、

 

 

不信感は持ってていいです。未納者、将来の無年金者にだけはならないで

以上で日本在住の方々の年金制度への不信感そのものをゼロにすることは、まず不可能と思われます。 しかし根拠のない不信感だけは無くしませんか?

不信感を抱いたままでも、制度そのものに注意を向け「自分にとっては将来損か得か?」判断していくことが大切だからです。

未納者になるのはやめましょう。 自分に将来報いが来ます。 将来の無年金者になることだけは絶対に避けて下さい。

つまり今まで通り文句も愚痴も言って良し。 とは言いつつ保険料をちゃんと払って将来の年金の受給額を増やして下さい。