「私はアメリカに来た後も日本の年金の保険料を払ってるから、65歳になったら日本の年金もアメリカのソーシャル・セキュリティも両方もらえるのよ」という声をよく耳にします。
準備おこたりなく立派です。 中にはお母様が保険料を払ってくれていたという方もいて羨ましい限りです。
が(!)タイトルで【警告】しているのは、もしその国民年金の保険料を支払っている(いた)期間と同じ時期にアメリカのソーシャル・セキュリティ税を支払っていたとしたら、それは両国の社会保障制度の2重加入となることです。 これって、要注意です。
2重加入がどうしていけないのか? と言いますと、65歳になって日本の年金を受け始めますと、その後に受けるであろうアメリカのソーシャル・セキュリティ(退職年金 Retirement Benefits や遺族年金 Survivor Benefits)は、なんと60%まで減額されることになるからです。
これはアメリカの Windfall Elimination Provision (棚ぼた防止規定)によるものです。
ごくたま~にですが、この棚ぼた防止規定でいうところのソーシャルセキュリティ減額対象にならない人がいます。
たとえば、アメリカには留学目的で来ていて、合衆国内で一度も働いたことが無く、アルバイト・パートも一切せずに学校を卒業し、それと同時に結婚して専業主婦になってしまった。 夫とのジョイントの税申告では自分は被扶養家族になっており、ご自身は生涯一度もSSA tax (ソーシャル・セキュリティ税)を払ったことがない。
こういう方がいたら、2重加入の心配はありません。
ですが、アメリカ在住中になんらかの収入があって、タックスリターン(税申告)でも SSA tax を払っており、それと同時期に日本の国民年金に任意加入して保険料を払っていたとしたら、あなたは日本とアメリカの社会保障制度に加入している、立派な2重加入ということになります。
棚ぼた防止規定の全文を英語で読まれたい方はこちら(Windfall Elimination Provision)
棚ぼた防止規定の和訳(前編)を読まれたい方は(僭越ながら)こちら
棚ぼた防止規定の和訳(後編)を読まれたい方は(僭越ながら)こちら
後者の場合、ソーシャル・セキュリティのフルリタイアメント・エイジになって初めて、その受給額が減額される事実を知っても、国民年金のほうを全額あきらめる人はなかなかいないと思います。 なぜなら、国民年金の保険料は払い戻しされないからです。 つまり掛け捨てです。
なので、しぶしぶ国民年金の加入期間分の老齢基礎年金を受けることになるでしょうが、この受給状況は日本からアメリカのIRSへ、つぎにSSA(米国社会保障省)へ情報が移行します。
残念でした。
ここまで読んで、「あっ! 私はずっと専業主婦だし今は夫もリタイアしてるから、これから国民年金に任意加入して過去の分の保険料も今からまとめて払いたいんだけど、大丈夫よね?」という人が出てきますね? ほれ、そこに。
先月開催した私の年金セミナーでもこう聞いてきた方が何人かいました。 このブログでも以前、保険料の後納の話をしたことですしね。
年金の額を今から増やすにはどうしたら良いの? – 後払い(追納と後納)
既に64歳になっていて、来年の満65歳から年金を受け始めようかと計画中ならば、そして年金の受給額をイッキ!に増やしたいとお考えの方は一瞬、あかるい光が見えちゃいましたか?
これね~ あなたの場合はダメ、駄目。 実は過去に「任意加入の手続き」を済ませていない限り、後から支払いたい!と申し出ても保険料の後納はできないのです。
年金制度に加入することと実際に保険料を支払うことは別
たとえば私の場合、15年前にアメリカの会社を突然解雇されたとき、ピンチはチャンス!とばかりにそれまで加入していた401Kを全額解約してキャッシュに替え、そのお金で日本の国民年金任意加入分のため込んでいた保険料未払い分を後納しました。 数10万円でイッキに。
それは、過去に任意加入手続きだけしておいて最初の1年分の保険料はコンビニで支払った※ものの、2年目からの保険料は滞納していたのを思い出したからです。 2重加入はどうあっても避けたかったのです。
なのでこれから国民年金に加入したいという方で、30、40、50代の方は今のうちに加入手続きだけは済ませておきましょう。 手続きができるのはコチラです☟
任意加入(国民年金)- 海外在住者が知っておくべきこと
ところで今、国民年金の保険料っていくらなんでしょ? 調べたら、こんなん出てきました。
日本の国民皆保険制度ができた昭和36年からの国民年金保険料の変遷が表になってます。 これ見やすく並べ替えたのが☟です。
保険料を納付する月 | 定額 | |
35歳未満 | 35歳以上 | |
昭和36年4月~昭和41年12月 | 100円 | 150円 |
昭和42年1月~昭和43年12月 | 200円 | 250円 |
昭和44年1月~昭和45年6月 | 250円 | 300円 |
昭和45年7月~昭和47年6月 | 450円 | |
昭和47年7月~昭和48年12月 | 550円 | |
昭和49年1月~昭和49年12月 | 900円 | |
昭和50年1月~昭和51年3月 | 1,100円 | |
昭和51年4月~昭和52年3月 | 1,400円 | |
昭和52年4月~昭和53年3月 | 2,200円 | |
昭和54年4月~昭和55年3月 | 3,300円 | |
昭和55年4月~昭和56年3月 | 3,770円 | |
昭和56年4月~昭和57年3月 | 4,500円 | |
昭和57年4月~昭和58年3月 | 5,220円 | |
昭和58年4月~昭和59年3月 | 5,830円 | |
昭和59年4月~昭和60年3月 | 6,220円 | |
昭和60年4月~昭和61年3月 | 6,740円 | |
昭和61年4月~昭和62年3月 | 7,100円 | |
昭和62年4月~昭和63年3月 | 7,400円 | |
昭和63年4月~平成元年3月 | 7,700円 | |
平成元年4月~平成2年3月 | 8,000円 | |
平成2年4月~平成3年3月 | 8,400円 | |
平成3年4月~平成4年3月 | 9,000円 | |
平成4年4月~平成5年3月 | 9,700円 | |
平成5年4月~平成6年3月 | 10,500円 | |
平成6年4月~平成7年3月 | 11,100円 | |
平成7年4月~平成8年3月 | 11,700円 | |
平成8年4月~平成9年3月 | 12,300円 | |
平成9年4月~平成10年3月 | 12,800円 | |
平成10年4月~平成11年3月 | 13,300円 | |
平成11年4月~平成12年3月 | 13,300円 | |
平成12年4月~平成13年3月 | 13,300円 | |
平成13年4月~平成14年3月 | 13,300円 | |
平成14年4月~平成15年3月 | 13,300円 | |
平成15年4月~平成16年3月 | 13,300円 | |
平成16年4月~平成17年3月 | 13,300円 | |
平成17年4月~平成18年3月 | 13,580円 | |
平成18年4月~平成19年3月 | 13,860円 | |
平成19年4月~平成20年3月 | 14,100円 | |
平成20年4月~平成21年3月 | 14,410円 | |
平成21年4月~平成22年3月 | 14,660円 | |
平成22年4月~平成23年3月 | 15,100円 | |
平成23年4月~平成24年3月 | 15,020円 | |
平成24年4月~平成25年3月 | 14,980円 | |
平成25年4月~平成26年3月 | 15,040円 | |
平成26年4月~平成27年3月 | 15,250円 | |
平成27年4月~平成28年3月 | 15,590円 | |
平成28年4月~平成29年3月 | 16,260円 | |
平成29年4月~平成30年3月 | 16,490円 | |
平成30年4月~平成31年3月 | 16,340円 |
開始当時は35歳未満と以上で保険料は違っていたのですね。 それにしても100円って・・・ 今から払う人にとっては夢のような話だわ。
追納する方は、その当時の保険料のレートで支払いますからラッキーですね。
※現在、コンビニエンス・ストアで国民年金の保険料を納付できます。